結露は、戦後に始まった

【結露って何】

結露ってとっても身近な自然現象です。自然現象の結露の一つは、「雨」です。(もちろん雪も)空気中の水蒸気が、暖められて上空に上がった時に、冷やされて露点温度以下になると雲になって雨になります。だから、結露現象って人や自然にとってなくてはならないものです。ちなみに霧、朝露なんかも結露です。

でも、この結露、建物の中で起きると悪者になってしまいます。カビが生えたり、木材を腐らせたり、シロアリを誘引したり。良いことがありません。

日本における建物の結露は、戦後、北海道で鉄筋コンクリートの住宅が出来たことによって始まりました。今では考えられませんが、その頃は、無断熱のうえ、石炭ストーブで湯沸かしをしていたことで表面結露が発生していました。次にその結露対策として、木毛セメント板、木片セメント板、ベニヤ合板等を断熱材として使用し始めましたが、その結果、冬型の内部結露が発生するようになります。

更に、内部結露対策として、グラスウールや質の低いフォームポリスチレンを使用しましたが、内部結露は解決せず、1960年代に質の良いスタイロフォームを使用し始めたことによって、内部結露は減少しました。

1965年ごろからは、一般の住宅でも木製建具からアルミサッシへ移行し始め建物が気密化しましたが、開放型石油ストーブが普及すると、全国で冬型の結露が増えだしました。

1980年に旧省エネルギー基準の施行によって断熱材が普及すると、今度は、断熱性の低いサッシ枠やシングルガラスの表面に結露が発生し始めました。

窓ガラスの結露

その後、1992年の新省エネルギー基準を経て、1999年の次世代省エネルギー基準の施行頃には、建物の断熱性能も向上し、サッシの断熱性能・気密性能も向上していった結果、冬型の結露の要因は、主に室内の生活由来の水蒸気になっていきました。

2003年以降は、改正建築基準法の施行で、シックハウス対策として24時間換気が義務化され換気を1時間に0.5回以上行うことが、義務化されました。この24時間換気で、室内の汚染物質だけでなく、結露の要因となる水蒸気も排出してくれる結果となりました。

その頃は、エアコンもどんどん普及していたため、冬の室内の水蒸気量も、大きく改善されはじめ、冬型結露は減少していきます。

更には、2009年の瑕疵担保履行法の施行によって、建設業者や宅地建物業者に、「雨水の侵入を防止する部分の瑕疵担保責任を10年間負う」ことが義務付けられました。

その結果、雨水の侵入を予防するために、最も効果的な手段として、「外壁に通気層を設ける」ことが普及していきます。

この通気層は、外壁内の水蒸気を外部に排出してくれるため、「内部結露の予防」にも大きな効果がありました。 このように、断熱性能の向上、24時間換気の義務化、通気工法の普及等によって、冬型の結露は、かなり減少してきました。

通気層と水蒸気の排出

しかし、これらの対策は、全て冬型結露対策でした。

冬型結露が減る一方で、最近は、夏型結露の調査が増えてきました。なぜでしょう?それは、気候変動の影響で、外気の露点温度が上がってきたためなんです。

1980年 東京観測所の8月の平均露点温度は、21℃位でした。ところが、2024年の平均露点温度は、25℃位まで上がりました。更には、最高露点温度が、28℃を超えている時もありました。

1980年と2024年の夏の露点温度比較

このような露点温度の高い外気が、建物の中に入ってきると、冷房で冷やされた箇所に接触して、結露が発生しやすくなってきています。夏にコンセント周りや壁や天井の表面にカビが生えてきたら、要注意です。

【結露による被害】

建物内に結露が発生すると、私たちの暮らしに様々な被害を及ぼします。その被害を見ていきましょう。

[被害1 かび菌]

カビの人への健康被害は、「真菌症」、「アレルギー症」、「中毒症」の3通りあります。真菌症は、カビが人のなどで増殖することで起こりますが、抵抗力が低下したときに感染するので「日和見感染」とも言われます。体調や年齢によっては真菌が原因の肺炎を発症することもあり、死亡に繋がる場合もあります。アレルギー症は、カビやその代謝物がアレルゲンとなって発生する、「気管支喘息」、「過敏性肺炎」、「鼻アレルギー」等があります。

中毒症は、カビが産出するカビ毒が体内に摂取され、健康被害をもたらす病気です。カビ毒には、ナッツ類に発生する「アフラトキシン」といった発がん性の強い毒性を持つカビ毒もあるので、注意が必要です。

カビは、微生物の一種で正式には、「真菌」と呼ばれています。真菌の仲間には、糸状菌、酵母、キノコがあります。カビは、菌糸が枝分かれしながら成長しますので、糸状菌です。建物に発生して我々を悩ますのは、ほとんどこの糸状菌であるカビです。

カビの顕微鏡写真

カビは自然界に常に存在します。特に土の中にはたくさんの種類のカビが住んでいます。数も1g中に数十万以上いて、動植物の死骸を分解して土に戻す役割をしています。そして、カビの胞子や菌糸は、土の表面から舞い上がってあちらこちらに飛んでいきます。空気中には、常にカビ胞子が浮遊していて、繁殖に適した環境に落ちたカビ胞子は生育していき、日射の当たるコンクリートの上など、暑く乾燥したところに落ちたカビは、生育できずに死んでいきます。従いまして、カビの生育には、環境が重要ということになります。

カビの生育には、温度、水分、栄養、酸素は必要です。多くのカビの生育温度は、15℃~30℃で、もっともよく発育する温度は、20℃~30℃です。30℃を超えると限られたカビしか繁殖することができません。この温度の範囲は、人の暮らす温度環境と同じです。次に水分ですが、カビが生える基準として湿度と含水率があります。湿度は、空気中の水蒸気が、どれだけ飽和水蒸気量に近いかを表しています。カビが生えやすい湿度は、カビの種類によって異なりますが、だいたい70%~100%です。

ただ、エアコンによる除湿によって湿度は落とすことができますので、ある程度カビを抑制することは可能です。

一方、雨漏れや結露が生じると、含水率は、一気に上昇し、30%を超えます。このように、雨漏れや結露は含水率を上げ、カビにとって繁殖しやすい環境を作り出します。

酸素やカビの栄養となる有機物は、人の暮らす環境には常に存在しますし、温度も人が快適に感じる温度は、カビも快適に感じますので、カビを抑制するためには、水分を抑制するしかありません。 従いまして、結露・湿気の予防・是正は、カビ対策でもあるわけです。

[被害2 腐朽菌

木材腐朽菌も、結露によって繁殖します。特に25%以上に含水率が上がった木材は、腐朽菌が繁殖し、建物の耐久性・耐震性に大きな影響を及ぼす可能性があります。計算上、耐震性能があってもそれを支える構造材が腐っては、安心できません。

木材腐朽

[被害3 白蟻

結露は、白蟻を誘引します。日本のシロアリは、湿気が大好きだからです。また、腐朽菌のにおいにもシロアリは引き寄せられるんです。なかでもイエシロアリは、大きなコロニーを作り、構造に大きな被害を与えます。一時的に白蟻の駆除をしても原因となる結露を直さないとまたシロアリはやってきます。過去の阪神淡路大震災・東日本大震災で、倒壊した多くの建物が、白蟻や腐朽菌による構造材の劣化が原因でした。